田中勝也研究室

環境経済学 × 気候・災害リスク × データサイエンス

研究紹介

気候変動リスクへの適応は、何を変えれば進むのか。この問いに、4つの領域から取り組んでいます。それぞれの領域について、代表的な論文と、そこから分かったことを紹介します。図は論文の推定結果をもとに、このページのために作成したものです。

災害リスクコミュニケーションと避難行動 気候変動適応と都市レジリエンス グリーンインフラと環境政策 持続可能な交通・都市空間

災害リスクコミュニケーションと避難行動

警報や避難情報が届いても、実際に避難する人は多くありません。情報が行動に変わるまでに何が起きているのか、どのような情報なら人は動くのかを、仮想の災害シナリオを用いた調査実験で調べています。

同じ警報でも、反応する人と反応しない人に分かれる
情報のわかりやすさの評価警報の内容に反応する層 67.0%33.0%
避難の意向警報の内容に反応する層 80.7%19.3%

警報の内容に反応する層 警報の内容にほとんど反応しない層

洪水リスクのある地域の住民1,671人を対象とした要因サーベイ実験。有限混合ベータ回帰で推定した2つの層の構成比。

出典:Tanaka, Kito, & Tanaka (2026), International Journal of Disaster Risk Reduction, 137, 106075 をもとに作成

代表的な論文

気候変動適応と都市レジリエンス

猛暑や洪水、巨大地震への備えには、限られた予算をどこに振り向けるかという判断が伴います。市民が何を優先し、その優先順位が費用負担への賛否とどう結びつくのか、また話し合いを重ねることで市民の考えがどう変わるのかを調べています。

暑さ対策、市民の優先は命を守る対策から
救急医療体制の強化2.66
クーリングシェルターの拡充1.81
リアルタイムの暑熱情報の配信1.28
都市の緑化1.19
日陰の創出0.78
給水スポットの設置0.46
熱中症予防の教育0.39
暑熱アラートの改善0(基準)

横浜市民1,819人を対象としたベスト・ワースト・スケーリング(BWS)。混合ロジットの平均パラメータで、「暑熱アラートの改善」を0としたときの相対的な重要度。

出典:Tanaka & Akaishi (2026), Risk Analysis, 46(8), e70315 をもとに作成

代表的な論文

グリーンインフラと環境政策

雨庭や街路樹、緑地など、自然の働きを生かして大雨や暑さの影響を和らげるグリーンインフラは、気候変動への適応策の一つです。その効果を地域単位で検証するとともに、土地を持つ企業や市民が導入を選ぶ条件を調べています。

企業の導入の選択と最も強く関連したのは、維持管理費の補助
維持管理費の補助1.03
導入時の技術支援0.75
導入時の補助0.74
維持管理の技術支援0.72
雨水の貯留・浸透機能0.70
環境認証の取得支援0.25(有意でない)
生態系に配慮した緑化0.20(有意でない)
景観に配慮した緑化−0.20(有意でない)
導入費用(2万円/㎡以上)−0.65

札幌市の企業のうち、選択型実験の課題に回答した78社の条件付きロジット推定値。濃い棒は10%水準で統計的に有意、薄い棒は有意でない。導入費用は1万円/㎡を基準とした2万円/㎡以上のダミー変数。

出典:王・田中・向山(2026)『都市計画論文集』61(3), 840–847 をもとに作成

代表的な論文

持続可能な交通・都市空間

交通静穏化や歩道空間の改善は、安全で歩きやすい街をつくる一方、車の通行や費用をめぐって意見が分かれやすい施策です。住民がどの施策を好み、どこまで費用を負担してよいと考えるのかを調べています。

交通静穏化策、最も選ばれたのは横断途中の待避島
横断途中の待避島1.92
小型ラウンドアバウト1.67
シェアドストリート1.58
ゲートウェイ(減速区域の入口表示)1.49
舗装の色・模様1.11
ダイバーター(車の通行制限)0.48
スピードハンプ0.37
狭さく(歩道の張り出し)0(基準)

米国ポートランド市の19路線の沿道に住む1,717人を対象としたベスト・ワースト・スケーリング(BWS)。混合ロジットの平均パラメータで、「狭さく」を0としたときの相対的な選好。

出典:Tanaka et al. (2027), Transportation Research Part A, 215, 105293 をもとに作成

代表的な論文

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